【エッセイ】ワーキングマザー vol.16

投稿日: カテゴリー ワーキングマザー

「何食べる?」

顔を上げると懐かしい顔があった。

「え?」

「腹減ってるっしょ?良いとこあんのよ。こっち。」

久しぶり!でも元気だった?でもなく、何食べる?って…相変わらずマイペース。

会社用のカバンで歩く方向を示す雑なところ。

あの頃のまんま。

 

「遠いの?」

「いや、すぐそこ。魚好きだよね?あ、肉のが良かった?」

 

人の話はろくに聞いていないくせに、どーでもいいことは良く覚えてるところ。

これもあの頃のまんま。

 

「どっちでも。子供産んでからお肉もよく食べるようになったんだわ。」

「へー。」

 

何これ。普通。すごく普通。

全然再会の感動なんかない。

私は一体何を期待していたのだろう。

今まで一度もそんなセリフを言われたことはないけれど、せめて少し生活感を無くそうと努力した今日の格好ぐらい褒めてくれてもいいんじゃないだろうか。

 

彼が連れてきてくれたのはいわゆる居酒屋だった。

 

「いいでしょ、ここの雰囲気。とにかく美味いんよ。何飲む?ビール嫌いだったよね?」

「そーゆーことだけはよく覚えてるよね。ワイン、白。」

「ここにワインあると思う?」

「じゃあビールでいいわ。ねえ、久しぶりに会ってんだからさ、ないの?元気だった?とかさ。」

「あー元気だった?でも元気そうじゃん。」

「そーゆーことじゃなくてこれでも10年ぶりよ、私達。」

「もうそんな経ってる?そーいえばお子さんたち元気?」

「何急に。元気よ。めっちゃやんちゃ。めっちゃ可愛い。」

「ママか~なんかすっげーな歳月って。」

「太ったよね?」

「俺?まーね。接待太り。そっちは変わんないね。綺麗じゃん。ママには見えないよ。でも、まーお互いに老けたか。」

 

「お待たせしました~。ビールで~す。」

店員さんに助けられた。

少しドキッとしてしまった自分に気付かれていたらどうしよう。

昔から不器用なくせに、サラッと女性が喜ぶようなことを言えちゃう。

これもあの頃のまんま。

そして、私がこいつを好きだった理由。

でもやっぱり『こいつ』って思ってしまうのは、傷ついた、傷つけられたとまだどこかで思っているからで、私がまだ大いに引きずっている証拠でもある。

 

店内にはFMがかかっている。

「奥さんは?どんな人?」

「普通の子だよ。」

「こっち出身の子?」

「そーそー。田舎者だよ、東京の人からしたら。」

「可愛いの?」

「別に。普通じゃん?」

「てか、聞かれる前に自分で話してよ。自分の近況をさ。」

「なんだよ、それ(笑)」

 

クシャっと笑った。

これ。

これがこいつで、一番離れられなかった理由。

Writer:

1982年生まれ。世田谷区在住。帰国子女。2児の男の子のワーキングマザー。
先月より(2016年9月)、息子たちとの時間や家族時間を増やしたく、OLを思い切って脱出し事業を始めました。4歳の息子を経営に加え、初の家族経営型 website ”Charlie House" http://charliehouse.jp/では、家族で良いと思うコ ト、ヒト、モノや日常をご紹介させていただくことで子育て世代へにヒントをお届け出来ればと思っております。私たちが目指すのは家族の笑顔が増えることです。独自の子育て論と型にハマらない新しいママの働き方を掲げながら、自然派のワークショップも開催しておりますのでチェックしてみてください。

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